インナーテントの選び方
「インナーテントの選び方」—孤高のキャンパーの手記—
第一夜 —森のささやき—
霧深い森の中、一人の旅人がいた。
彼の名はリュウ。孤独を愛し、自然を友とする者。テントを張るのは何度目か知れぬが、今夜は違った。モノポールテントの中に、さらにもう一つのテント——インナーテントを選ぶ必要があった。
「ただの布切れじゃない……これは、俺の聖域だ」
彼は焚き火に手をかざしながら、小さなメモ帳を開く。そこには、インナーテントを選ぶための旅人の心得が記されていた。
第一章 —フロアのあるものか、ないものか—
「インナーテントには、床があるものと、ないものがある……」
リュウは独り言のように呟いた。
フロアありのインナーテントは、地面からの冷気や虫の侵入を防いでくれる。夏場のキャンプ場や湿地では特に頼りになる。だが、フロアの生地が薄いと耐久性がなく、尖った石や枝に弱い。
一方、フロアなしのインナーテントは軽く、設営も簡単だ。薪ストーブを使うときや、焚き火を中に入れたいときには都合がいい。ただし、地面に直接寝ることになるため、グランドシートやコットが必要になる。
「俺は……フロアありにするか」
リュウは筆を走らせる。冬の旅は寒い。地面からの冷えを防ぐことが何より大事だった。
第二章 —通気性と防寒性の狭間—
「夏は蒸れる、冬は寒い……どっちを取る?」
これはキャンパーにとって永遠の課題だ。
メッシュインナーテントは夏場の救世主。通気性抜群で、虫の侵入を防ぐ。だが、冬はスースーと風が入り込み、シュラフにくるまっても寒さに震えることになる。
フルクローズのインナーテントはその逆。寒さを防ぎ、プライバシーも守る。だが、夏場は蒸し風呂のようになり、風のない夜は地獄と化す。
「メッシュは論外だな……」
冬の旅が多いリュウにとって、暖かさこそが最優先だった。
第三章 —サイズと居住性—
「広すぎるのも考えものだ……」
インナーテントのサイズは外張りのテントに影響を受ける。大きすぎれば設営が大変になり、テント内のスペースを圧迫する。小さすぎれば、荷物を置く場所に困る。
「俺はひとり。だけど、少し広めがいい」
インナーテントは、1.5倍のサイズを選ぶのが快適なキャンパーの鉄則。寝るだけのスペースではなく、着替えや荷物の置き場を確保するためだ。
「2人用サイズのインナーを、ソロで使う。それが俺流」
リュウは筆を走らせる。
第四章 —設営のしやすさと強度—
「設営に手間取るテントは、死を招く」
冬山では、一刻も早くシェルターを張ることが命を守る手段となる。インナーテントの設営が面倒であれば、それだけ寒さにさらされる時間が長くなる。
「吊り下げ式がいいな……」
吊り下げ式のインナーテントは、外張りのテントを設営した後に、フックで簡単に固定できる。面倒なポール組み立てもなく、撤収も楽だ。
自立式のインナーテントは単独でも使えるが、ペグダウンが必要で、風が強いと苦労することもある。
「シンプルが一番だ」
第五章 —結論—
焚き火の炎が小さくなる頃、リュウはようやく結論を出した。
彼が選んだのは、
✅ フロアあり
✅ フルクローズ
✅ 2人用サイズ(ソロ使用)
✅ 吊り下げ式
「これで決まりだな」
インナーテントは、ただの寝床ではない。冬の夜を守り、風から身を隠す聖域だ。
リュウは満足そうに、焚き火を見つめた。
朝になれば、新しい旅が始まる。
そして今夜、彼の選んだインナーテントが、彼の眠りを守るのだった。